日本シリーズ第四戦
第四戦目の先発はプロ入り二年目の本格派右腕、岸孝之投手。前年は駒大苫小牧出身の楽天・田中将大投手と新人王を争い、地元贔屓で田中投手の受賞を願っていた私には「目の上のたんこぶ」的存在であった。
私は長らく西武ライオンズを応援して来ていたが、北海道日本ハムファイターズが本拠地を札幌に移して以降、その情報量にすっかり洗脳されたこと、他にも様々な要因があって、今ではファイターズ・ファンを名乗っていたりもする。日頃のファイターズ視点では、今季対戦成績でファイターズがライオンズに負け越しているのを示す通り、岸投手に関してもなかなか打たせてくれない「天敵」というイメージがある。
しかし、直前に行われたクライマックス・シリーズでは、ファイターズが岸投手から五点も奪って四回ノックアウト。いざライオンズ側に立ってみれば、これは大きな不安要素。
![]() Blue, Blue, and Blue! |
![]() ブルペンで練習中の岸投手 |
![]() 第四戦の始まり~ |
どちらにせよ岸投手に関しては悪い印象ばかりで、一回表に二アウトからたった一つの四球を出しただけで、ああまただ、もう駄目だ、と既に投げやりな気持ちになっていたが、次の四番打者を三振に切って事無きを得た。その直後、一回裏のライオンズの攻撃。初っ端から片岡選手のヒットと盗塁、続く二番打者の栗山選手のタイムリー二塁打で、ライオンズがあっさり先取点をもぎ取る。
四回裏ライオンズの攻撃で、先頭打者の中島選手が死球を受ける。大事に至っていないかと、一瞬ざわめくスタンド。マウンドからベース方向に歩み寄る、相手投手グライシンガー。後で知ったが、「何故避けないんだ」と中島選手に文句を言ったらしい。ぶつけておいて何をー!? 一触即発、睨み合う二人に引き寄せられるように、両軍ベンチから選手達が一気にグラウンドに雪崩れ込んで来た。良く見れば、目の前にあるブルペンとグラウンドとを繋ぐ扉が開けっ放しで、ブルペンはもぬけの殻。うわ、プルペン陣もやる気満々だ! でも、残念ながら(?)乱闘には至らず。
![]() な、何事!? |
![]() ブルペンからも掛け付ける |
![]() 撤収 |
ドーム全体が騒然としたままで、ゲーム再開。その初球におかわりクンこと中村選手が、豪快なホームランを放つ。中村選手は六回裏の次打席でも二ランを「おかわり」し、ライオンズが5-0でリードを広げ、相手先発ピッチャーをマウンドから引き摺り下ろした。
![]() 連夜のおかわりHRに呆然の敵外野陣 |
![]() ライオンズファン熱狂 |
![]() 画面では盛り上がるベンチの様子が |
当初不安視していた岸投手の調子は良く、敵打線のバットが空を切り捲り。もう何個目なのか、スクリーンに奪三振を誇示する文字が躍る。マウンドの細い身体から繰り出される球が見逃され、キャッチャーのミットに吸い込まれる様は芸術的。日頃のファイターズ寄り「敵目線」で見て、悔しいけれどもやっぱり良いピッチャーだよなあ……と、溜息をついてしまう。
![]() 攻める |
![]() 投げる |
![]() 淡々と進む |
岸投手は最後まで一人で投げ抜き、散発の被四安打、計十個の毎回奪三振で完封勝利。日本シリーズ初登板での完封と毎回奪三振は、史上初めての記録だとか。
![]() 勝利の瞬間 |
![]() 引き上げるナイン、迎えるベンチ |
![]() 笑顔・笑顔 |
万が一負けていれば三敗目で後がなくなり、明日の観戦が辛いものになる危険性があったのを、「目の上のたんこぶ」で「天敵」だった岸投手が救ってくれた。場内に流れる控え目なヒーローインタビューを聞きながら、勝ち試合を観戦出来た喜びに浸り、帰る足取りも軽くなった。
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